子育てママが転職先でハラスメントを受けたら、まずは身の安全を確保し、発言や行為の記録を残してください。そのうえで、会社の相談窓口や人事に相談し、解決しない場合は都道府県労働局の相談窓口など外部機関を利用します。
妊娠・出産、育児休業、子どもの急な病気や保育園の都合を理由にした嫌がらせは、内容によって「妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント」や、職場でのパワーハラスメントに当たる可能性があります。
子育てママの転職で起きやすいハラスメントとは
子育てを理由に不利益な扱いを受けたり、働き続けにくくなるような言動を繰り返されたりする場合は、単なる職場の不満ではなく、ハラスメントの可能性があります。
- 「子どもがいる人は責任のある仕事を任せられない」と一方的に仕事を外される
- 保育園の送迎や子どもの発熱を理由に、繰り返し嫌みを言われる
- 育児休業や子どもの看護等休暇を申し出たことで、退職を迫られる
- 妊娠や出産の予定を執拗に聞かれる
- 「子どもがいるなら採用しなければよかった」などと繰り返し言われる
- 他の従業員の前で、育児や家庭の事情を理由に侮辱される
- 必要な連絡や仕事を意図的に外される
一度の発言だけで法的なハラスメントに当たるかは、発言の内容、回数、立場の強さ、業務上の必要性、就業環境への影響などによって判断が変わります。ただし、違法かどうか確定していない段階でも、記録を残して相談することはできます。
ハラスメントを受けたときに最初にすること
最初にすることは、起きた事実をできるだけ具体的に記録し、証拠を保存することです。感想だけでなく、「いつ、誰から、何を言われたか」「仕事や体調にどのような影響があったか」を残します。
- 日時と場所を記録する
発言や行為があった日、時刻、場所、相手、同席者をメモします。 - 発言や行為をできるだけ正確に書く
「嫌なことを言われた」ではなく、「子どもがいるなら昇進は無理だと言われた」のように、覚えている言葉を具体的に残します。 - 業務上の影響を記録する
担当業務を外された、必要な情報を共有されなかった、勤務時間を一方的に変更されたなど、起きた変化を書きます。 - メールやチャットを保存する
削除される可能性があるため、会社の端末だけでなく、社内規定に反しない方法で日時や内容を確認できる状態にします。 - 体調に影響がある場合は医療機関に相談する
不眠や動悸、食欲不振などがある場合は、無理に我慢せず医療機関へ相談します。受診日や診断書の有無も記録しておきます。
録音を検討する場合は、録音データの扱いや社内規定に注意が必要です。録音の可否や証拠としての扱いは状況によって異なるため、重要な案件では労働相談窓口や弁護士に確認してください。
会社に相談するときの伝え方
会社へ相談するときは、「子育てに理解がない」とだけ伝えるのではなく、事実と希望する対応を分けて伝えると、会社が調査しやすくなります。
相談内容に入れる項目
- ハラスメントを受けた日時、場所、相手
- 具体的な発言や行為
- 目撃者や関連するメール・チャットの有無
- 勤務や心身への影響
- 会社に求める対応
たとえば、「〇月〇日、上司から『子どもがいる人には重要な仕事を任せられない』と言われ、その後担当から外されました。発言の確認と、今後同じ発言が起きないための対応を求めます」と伝えます。
相談先は、直属の上司だけとは限りません。上司からのハラスメントであれば、人事部、コンプライアンス窓口、ハラスメント相談窓口、さらに上位の管理職など、別の窓口を選んでください。相談窓口が分からない場合は、就業規則、社内ポータル、雇用契約書、入社時の案内を確認します。
相談したことを理由に不利益な扱いを受けたら
ハラスメントの相談や調査への協力を理由に、解雇、契約更新拒否、降格、減給、不必要な配置転換などを受けた場合は、相談後の扱いも記録してください。相談したことを理由とする不利益な扱いが許されるとは限りません。
会社に相談した日、相談相手、相談内容、その後に起きた変化を時系列で整理すると、相談先に状況を説明しやすくなります。退職届や合意書への署名を急がず、内容を確認できない場合は、労働相談窓口や弁護士に相談してから判断してください。
会社で解決しない場合の相談先
会社に相談しても対応されない、相談しにくい、または会社自身がハラスメントの当事者である場合は、外部の相談先を利用できます。
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー:職場のトラブルについて相談できます。
- 都道府県労働局の雇用環境・均等部(室):妊娠・出産、育児休業などを理由とする不利益な扱いや、職場でのハラスメントについて相談できます。
- 労働組合:加入している組合や、地域の合同労組に相談できる場合があります。
- 法テラスや弁護士:損害賠償、退職、解雇、未払い賃金など、法的な対応を検討する場合に利用します。
相談先によって、できることや対象となる問題が異なります。相談の際は、雇用契約書、就業規則、給与明細、メールやチャット、ハラスメントの記録を持参できるように整理しておくと説明がスムーズです。
面接や内定前の嫌がらせは扱いが異なる
転職活動中の面接や採用担当者とのやり取りで、妊娠や出産予定、子どもの有無について不適切に聞かれたり、育児を理由に侮辱されたりした場合も、日時と発言を記録してください。
ただし、在職中の職場で起きるハラスメントと、採用前の面接での不適切な質問や対応では、適用される制度や相談先が異なる場合があります。「面接で嫌な質問をされたから、必ず違法」「不採用になったから、必ずハラスメント」とは断定できません。質問の内容、採用との関係、企業の対応などを整理し、労働相談窓口や法律相談で確認してください。
退職するか、働き続けるかの判断
退職するかどうかは、ハラスメントの内容だけでなく、会社が改善に動くか、心身の状態、安全に働けるかで判断します。すぐに退職しなければならないわけではありませんが、危険を感じる場合や心身の不調がある場合は、安全と健康を優先してください。
判断するときは、次の点を整理します。
- 会社が事実確認を行い、具体的な再発防止策を示したか
- 相談後に不利益な扱いや嫌がらせが続いていないか
- 勤務時間、送迎、休暇取得などの条件を現実に両立できるか
- 心身の不調が改善しているか
- 退職した場合の生活費、保育、転職活動の見通しがあるか
退職を選ぶ場合も、ハラスメントの記録や会社とのやり取りは、退職後にすぐ捨てずに保存してください。退職理由や退職日、会社から提示された書類の内容によっては、後の手続きに関係することがあります。
子育てママが転職先で確認しておきたいこと
転職先を選ぶときは、「子育て歓迎」という表示だけで判断せず、実際の勤務条件と相談体制を確認します。求人票に書かれていないことは、面接や内定後の説明で具体的に尋ねてください。
- 子どもの発熱や保育園からの呼び出しがあった場合の連絡方法
- 遅刻、早退、欠勤、在宅勤務の取り扱い
- 育児休業や子どもの看護等休暇の利用実績・申請方法
- 残業や休日出勤の有無と、断った場合の扱い
- ハラスメント相談窓口の場所と相談方法
- 試用期間中の勤務条件や契約更新の基準
「子どもの事情で休む場合、誰にどのように連絡しますか」「急な休みが必要になったときの代替方法は決まっていますか」のように、制度の有無だけでなく運用方法まで確認すると、入社後の行き違いを減らせます。
子育てを理由にした嫌がらせを受けたら、まず具体的な事実を記録し、社内窓口に相談します。解決しない場合や不利益な扱いが続く場合は、都道府県労働局の相談窓口、労働組合、法テラスや弁護士などに、記録を見せながら相談してください。







